8月中旬の電報

世の中の歯車が回らなくなると、不思議なことに何かを世の中に放つということの道理がわからなくなる。音楽の難儀さ、観客を前にすることへの希求というものがあって、ただ山奥に篭って何かを作り出すばかり、というのには今のところ魅力が感じられない。自分にとって想像以上に社会的な行動だった音楽、実演を心置きなくやること自体にはやはりしばらく見通しが立ちませんが、諸々あるので気が向いたらぜひ御チェック願います。

①かさねぎリストバンド、新曲「通り過ぎて全部」がだいぶ前に公開されました。全16名(?)による完全遠隔録音というのもありますが、それよりも曲全体の謎のグルーヴとあまり聞いたことのない類の推進感、見える風景の色みたいなものが色々変で面白いです。ぜひお聴きください。自分は手の音×7とラジオをやっています。
https://linkco.re/859pT6uy

②音楽仲間の尾花佑希さんがやっているマイクブランド、OBANA MICROPHONEの使用者インタビューを受けました。マイクなどの機材にはとんと疎いのですが、このマイクの音の良さとか使いやすさは本物だと思います。自分の記事以外にもたくさん面白いものがあるので、マイクに興味のある方や検討されている方はぜひサイトを覗いてみてください。
https://obanamicrofone.com/miyasaka/

③大学2年の時から入っている暗黒果汁的クンビアバンド、DF7Bが新譜(7インチ両面シングル)を出しました。物は言い様、いつどこで録音したものか全く覚えていないくらいではありますが、しかしフレッシュなよくわからない代物です。思えばこのバンドがなければ今の自分は絶対いないので感慨深くもありますが、そんなこともどうでも良くて、やはりサウンドのエッジや唯一無二の質感(南米のものにも欧米のものにも感じられない何かがある。帯域的なもの?)には見るべきものがあると思います。楽しいし、あとクンビアは熱中症にも効くらしいのでぜひ聴いてください。ライブがしたいな。
トレイラー https://www.youtube.com/watch?v=K728OCA-ar0&feature=youtu.be
diskunionの通販ページ https://diskunion.net/jp/ct/detail/1008173693

④大学の後輩の後藤君が主宰して制作したコンピレーション「アマビエ」に参加しました。企画の出た当時アマビエはそんなにポピュラーなワードではなかったけれど、その後雨後の筍のように誰もがアマビエ、アマビエとこぞるようになってしまったのでなんともはや、ですが全体的に色んな曲が詰まっていて面白いです。げんしけん第一期のノリを(非常に行為的な部分でのみ)思い出せるようなムードが詰まっています。中でもjohntremendasという人の曲はレベルが段違いですごい。こういう時期の中でみんなどうやって遊べるか、というコンセプトで、時の中でまた新たな価値が出てきそうです。自分はVol.1のM3とVol.2のM2に関わっています。
Vol.1 https://linkco.re/5nFhArg0
Vol.2 https://linkco.re/5nFhArg0

⑤昨年春に録音した蓮沼執太フルフィルの音源「FULLPHONY」がついに公開、発売になるそうです。26人が参加して、でもこうなってくるともはや人数については「多いのだろうな」ということしかわからないような音楽。むしろ聴きどころはやはり音のバリエーションの豊富さというか乱雑さ、それを全く「乱」に感じさせない曲と全体の雰囲気、それから端々に込められた本来主役にもなれるはずの狂気的な瞬間みたいなものなのかなと思って完成した音楽を聴いていました。もちろん穿りのない聴き方もいくらでも可能!全体的に面白くて素敵な、何度も聞ける一作だと思います。一番おすすめなのは蓮沼さんの根っこにある(と思っているけど本当のところは誰にもわからない…)瞬間瞬間を繋ぐインパルスの理知と運動神経の倍掛けみたいな電脳的音楽作りが満ち満ちたリミックス5曲。只管カッコいいです。
https://www.hasunumaphil.com/fullphony/
2020.8.26 (⽔)配信開始、2020.10.28(水)CD/LP発売だそうです。自分は打楽器と水などを録音させてもらいましたが、エンジニアの葛西敏彦さんと音響チームの皆さんのパワーで水がかなりすごい音になってます。聴いてね!

⑥最近所謂制作の仕事、マネジメントみたいなことをできるようにならないと諸々がダメだという気持ちから裏方仕事を手伝わせてもらっています。非劇場空間におけるダンスと音楽の実践によって劇場内では見えない色々に手を届かせて抉り取っていくプロジェクト、”LAND FES”のスタッフとして初めて関わらせてもらった配信ライブ映像”LAND FES vol.12 PARADISE AIR”がアーカイブ公開になっています。
https://vimeo.com/ondemand/landfesvol12paradiseair?fbclid=IwAR2KkZ9-pg0tzqB-2K6Ux9aCuz4-6_VnqVlCAlgdSrPmPMp8jIsyvMgdBQU
千葉は松戸の艶やか空間”PARADISE AIR”で繰り広げられるダンスと音楽のセッションは、ただ単に「変わったところでやってて面白いね」というだけでは終わらない効果の乱反射に満ちています。背景は舞台装置でもあり、踏みしめる地面でもあり、手を伸ばしすぎると当たってしまう壁でもあったりして、その場における行動を規定する、俳句や短歌における「定形」みたいなものでもあるようです。その要素を最大化する即興という手法の中で起こる乱舞は、本当に再現不可能で良いです。気になる方はぜひご覧ください。次回以降もあるし過去のアーカイブも面白いので、チェックだけでも。
https://landfes.com/

⑦ラブワンダーランドというとても素敵なラヴァーズ・ロックバンドの1st.アルバム「永い昼」で何曲かパーカッションをやっています。
https://smarturl.it/lovewonderland
深夜、京都大学軽音楽部の部室に落ちていた楽器とも楽器じゃないとも言えないものをボールペンで引っ掻いたりしたのですが、一体どれが自分の音なのか判別できないし、そんなことはどうでもいいのです。アルバム通して演奏と曲が本当に素敵で、聴いていると生協のソーセージのパッケージに描かれた牛のイラストがあまりにも愛しくてどうしようもなくなって泣いてしまった20年前の気持ちを鮮明に思い出します。柔らかいハンカチを噛んでも噛んでも噛みきれない、よだればかりが…という、そういう感じです。2020年、20代の遡行と現在。ただ裏打ちとワン・ドロップが進んで行くわけです。本日休演という素晴らしいバンドをやっているギター/作曲の岩出さんの演奏は燃える湯気のようで、すごく好きです。ドラムの茅さんという人は大学の先輩で、この人のドラミングは本当に凄まじいです。キレが眼に見えます。他のメンバーの方も(まだ接点がなくてよく知らないですが)相当なものを持っていないとこのヴァイブは出せないはず。とにかくおすすめ、夏の永い昼。入道雲ディレイにて消失。

⑧東京都の芸術文化事業支援策、「アートにエールを」に応募した映像が掲載されました。実際経済的なダメージが(対面、実演を基盤に置くという事情から)著しいどころではない音楽や演劇などの事業に対して、世の中とのバランスをとりながらスピード感を持って考えられた支援策としては良いものであり、ちゃんと色々な事情の分かっている方々が考えたものなのだなとも判断したので、様々な方をお誘いしつつ無理なく最大人数で応募した次第です。「大秘密基地」
鍵盤/その他の高橋佑成さん、ギター/その他の細井徳太郎さんと一緒にやっている即興演奏団体「秘密基地」にサックスの奥住大輔さん、松井宏樹さんのお二人を加えた楽器隊、そして鴇田智哉さんという鋭角から鈍角までの俳句を作られる方に書いてもらった句を角銅真実さんに朗読してもらい、全員でセッションしたものをエンジニアのうねゆたかさんに混ぜていただいて、最後それに和久井幸一さんが映像をバチリぶつける、という方法でした。面識のない方も含めた遠隔セッションは色々と難しさもありつつ、その中で最大効力を発揮したような文字通り痺れるモノになっています。ぜひご覧ください。
https://cheerforart.jp/detail/3048?fbclid=IwAR3U2d-gw4fQ6hcIXzlieUTDqjUsguo6xBeFmtOWREDPLlrO0_5W79LloSc

⑨武蔵野美術大学、工芸デザイン課のオープンキャンパスに際した学科紹介映像の制作に関わらせてもらいました。
https://www.koude-event.com/?fbclid=IwAR1Dr1ihnSdlQ8gJsqc7qnqOjfR0dSML_r_w2o_vX2DritmXQ3wMF5DngBA
環境音などを用いて鋭い音楽を作る田中堅大さんと協同して工芸デザイン課の広大な工房を回り、脳髄に響く良い音を探し回ったり演奏してみたりということを繰り返す至極楽しい1日で、もはや衝撃でした。こんなことばかりして生きていきたいとも思った。ありがちなプロモーションビデオを踏み越えたモノになっています。ぜひご覧ください。この映像が誰かの進路に影響したらいい。
誘ってくださった武蔵美助手の太田琢人さんの書いた作品解説文です↓
「MAU IIC OPEN CUMPUS」
「ものづくり」を通じて世界を眺める。工デは様々な素材との対話の中で新たな価値の創出を目指す学科だ。各専攻が専門性に特化した工房を保有し、あらゆる加工や制作を可能にする。今回オンラインオープンキャンパスに際し私たちが注目したのは「音」である。普段、素材との対話の中で生まれる多彩な音は身の周りに溢れているにも関わらず、耳を通過するただの環境音でしかない。しかしながら、作品の制作プロセスに必ず音は存在しており、無意識に聞き続けている音は作品を構成する大切な要素である。当たり前に存在しているからこそ見逃してきたものづくりについて再考する必要がある。
完成した音楽は無秩序な環境音と、各素材との出会いから始まる。作業音1つ1つの質感や特性を浮き彫りにすることで素材としての「音」を強く意識させる。徐々に人と素材との対話を通じた身体的なグルーブが加わり、音の粒がぼんやりと輪郭を形成していく。生まれたリズムや音の輪郭にデジタルを介した素材との対話が混ざりあい調和と混沌を生み出す。部分的であった性質が単純な総和として留まらず新たな特性や質感を持ち始める。終盤、耳を傾ける音によって、聞こえ方が異なり、一つの音楽として多角的な側面を持ち合わせる。日常と非日常、秩序と混沌、音楽と環境音、2言論では言い表せない中間のグラデーションを行ったり来たりする、そんな浮遊感がそこには存在する。
ものづくりとは本質的に何を意味するのだろうか?今回の動画は私たちが対峙している素材や制作の意識に根付く固定概念を外す、そんなメッセージをここに込められている。こんな世の中だからこそ新たな発想や価値が求められる。これからものづくりを目指す学生にそんな問いを投げかける。

ということで9つも溜めてしまっていた。最後まで見てくださった方は本当に偉いです。感謝!
書いていたら元気が出てきた。頑張れる気がする。

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